ゴルゴ13 名エピソードガイド 第315話「メデジンカルテル」
メデジンとはコロンビア西部に実際にある都市で、「メデジンカルテル」もかつて実在した世界最大級の麻薬密輸組織だ。ゴルゴは何者かの依頼でメデジンカルテルのボス、エステバロのジャングルの中にあるコカイン精製所に潜入する。
このエステバロこそ、麻薬王として知られるパブロ・エミリオ・エスコバル・ガビリアがモデルだ。エスコバルは1980年代にアメリカをはじめ世界中にコカインを密売し大富豪としてコロンビアに君臨していた。逆らう者は政治家だろうが警察だろうが暗殺しまくりの好き放題、1991年についに逮捕されるも何と自分用の豪華な刑務所を建て、そこでパーティー三昧の日々を送っていたという。
敵対する組織に命を狙われ、刑務所から姿を消すも、1993年12月に居場所を突き止めたコロンビア国家警察治安部隊によって射殺されたが、実際にはどういう経緯で誰によって殺されたかは不明瞭な部分も多い。
このエピソードが描かれたのは1992年11月。なんと一年以上も前にカルテル崩壊とエスコバルの死を予言しているのだ。さらに作中ではコカイン精製所があるジャングル奥地の様子や、どういう経路でアメリカに密輸をしていたかの正確な描写もあり、エスコバルの死によって世界中に知られる事になるカルテルの実態をかなり先取りしている事に驚くほかない。
ネットフリックが2015年から配信しているエスコバルを描いた大人気ドラマシリーズ「ナルコス」や、カルテルの運び屋を主人公にした2017年公開のトム・クルーズ主演映画「バリー・シール/アメリカをはめた男」など、今なお人気の題材をかなり先取る傑作エピソードだ。
Writer
今秀生