ゴルゴ13 名エピソードガイド 第382話「黄金の犬」
犬が主役と言っても差し支えないこのエピソードは特に人気が高く、屈指の名作とも言われている。
飼い主にただ会いたいだけでフランスからアルプス山脈を越えスイス、イタリア、ユーゴスラビア、ボスニア、スロベニアと旅するのはゴールデンレトリバーのレットン。そのレットンを追跡するためにゴルゴが選んだ犬がハスキー犬、ポインター、ニューファンドランド犬、シェパードの4頭。しかもそれぞれが犬種の特化した能力に秀でており、道々ゴルゴのピンチを助けたりする。その献身っぷりと、ゴルゴとの信頼関係は犬好きならずともグッときてしまうこと間違いなしだ。
そもそもはフランスの女性学者のオコーナーがDNA配列の組み換え実験中に哺乳類を襲う新種の伝染病原菌を偶然作り上げたことから始まる。イスラム原理主義の中でも強硬派集団「アラブの星」がその病原体に目をつけ、テロに利用することを思いつく。それは従来の十倍の凶暴性を発揮する狂犬病の病原体であった。
狂犬病は狂犬病ウイルスを病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、一度発症したら100パーセント死亡する恐ろしい感染症だ。ターゲットを犬に噛ませるだけでよく、人から人への伝播がないため、ある程度のコントロールが効く点がテロに向いているとも言えるだろう。
オコーナーは誘拐され、研究を進めさせられるのだった。このエピソードが描かれたのは1999年2月だが、2000年代に入ると生物テロはますます注目されるようになる。
エピソード内で語られる犬に関しての情報は実際にあった事実ばかりだ。ジフテリアにかかった村人たちを救うため、吹き荒れる雪嵐をものともせず犬そりで横断して血清を運んだアラスカ犬のエピソードは、1925年に実際に1000キロもの距離を走り「偉大な慈悲のレース」と呼ばれるようになった有名な出来事で映画にもなっている。
Writer
今秀生